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中田英寿さん文化の発信を語る

 パリの職人仲間から面白い動画があるよ、と聞いて視聴してみました。

そんなに興味津々で見始めたわけじゃないのに、なんだか久しぶりに激しく共感した動画となりました。

 

 

  まずは非常にうなずいてしまったところの多いこと。

私も普段作業をしながら:

「なんでこんなにこだわってしまうんだろう。」

「なんでここだけにこんなに時間をかけてしまうんだろう。」

と思うことがよくあります。

 

逆に同僚の仕事を見ながら、同じことを思ったりもします。

 

 多分、素人から見たら違いは目立たなくて、ここを妥協してもお店に並んだときには誰も気がつかないよ。っていうことなのかもしれない。 

 

え〜、でもここってもしかしたら強度に響くんじゃないか。

過去の経験上、いろいろ考えるとやっぱりよろしくない気がする・・・ 

 

聞かれたらちゃんと説明はできるけれど、それってそんなに大事なの?って言われると、う〜ん、実はそうでもないかもしれない。

 

 

 そういえば仕事中、アトリエ内で仲間同士でぶつかる原因もこれなんじゃないかと思う。

 

経験値に違いがある複数の職人さんが、一緒に仕事をしているとき。気になるところがいつも同じとは限らないから、相性が悪い時などは特に、いちいちそこで作業が止まってしまうこともある。  

 

 そうは言っても、人件費を無駄にかけることは、これまた許されないので、それぞれのこだわりにそう時間を割いてもられない。うまく折り合いをつけながら作業を進めていかなくてはならない。

そう思うとなんだか職人って、

 

”どうでもいいこと””どうでもよくないこと”の違いが正しく見極められるか

 

 これがプロが持っていて、素人が持っていない感覚。

 

やっぱりどんなに時間がかかっても、捨ててはならぬ工程のときは、頑張って我を通さなければならない。「ここはちゃんとやったほうがいい!」と強い気持ちで押し通さねば、「なんで気をつけなかったのよ!!」なんて工房のトップの人からあとで怒られる。

  ハイブランドの服があんなに高いのは、広告費やブティックの家賃が高いからだけではなくて、あの値段でないと裏で働く優秀な職人らの生活が、保障されないからでもあります。(その割にお給料安いけどね^^;)

 

 

 ところがこの動画で言っている問題は、消費者にはそれが全くわからないこと。

お店で値段をみて単純に「高い」と思われてしまう。中田英寿さんが指摘していて耳が痛かったところ。

 

 

これまで職人芸が廃れていってしまう原因は、工業生産による値段の競争に勝てないからだけだと思っていたけれど、それだけではないなと思いました。

職人さんたちって、そもそもものをつくることが仕事であって、他のことができないもの。

売るのも下手だし、マーケティングも知らないし、だから人が集められない。なのにモダンな情報の伝達の仕方を工夫しないと残っていかないという現実。

 

 例えばシャネルのブティックで高い値段をつけられていても、それはむしろ当たり前で、商品に価値があると知っているからそれは「買えない自分が悪い」とさえ思う。

”すごい職人さんたちが作っているすごい商品”だと、そもそも人々がちゃんと認識してくれる。

 ハイブランドは、高いものを買わせる説得力がある。

 

 100%手作業で作られたものがどれだけ”すごい”のかをきちんと伝えられたら、喜んでお金を出したいと思う人が増えて盛り上がるのではないか。そんなことを強く思いました。

 日本ではその橋渡しのきっかけを、文化庁にも担ってもらえないだろうか、と中田さんは言っているのですが。

 

 

 

 フランスでは、高級メゾンが職人の生活を守っていますが、そうでない人たちは生き残るのがやはり大変だと聞きます。50年前は50社もあったある分野が、21世紀は国内でわずか2社だけになった、などというドキュメンタリーもよく見ます。

 

 中には、後を継いだ息子がホームページを作って、SNSで拡散。ネットショップを始めたら、死にかけていた工房に注文がたくさん入るようになった、ということもあります。まさにモダンな情報の伝達。これがキーワード。

 

 

 

 

 

ところで、 話は変わって我が作品: Immana Paris

 

 今菜さん、すみません。せっかく買ったImmana Parisさんのブローチを洗濯機にかけちゃったんです!」

たまに、いや割と頻繁に言われるんです。でもそのあと、

「でもね、意外と無傷なんです!(笑)」

 もよく言っていただきます。

 

  手前味噌ですが繊細なパーツは例外として、そんなに簡単に型崩れするような刺繍はしていないから、それはそうだろうなと思うこともあります。

 製作する中で、「ここを手抜きしたら長持ちしないな」と思えば、それが気になってやっぱりしっかりやってしまう。このこだわりは、はじめた頃と今を比べるとだんだん強くなっていて、職人としての技術が日々育ち、見るところがどんどん細かくなってきているからです。

  材料によっていちいち糸の種類まで変えていたり、それを決める基準も、これまで自分がメゾンのアトリエで散々働いてきて教わったことが、ベースになっています。

ずっと使っている糸の品質が落ちてきた、と気付くのも早いし、さっさと他社のものに乗り換えています。

 

 でもそんなのは、ほとんどの人にはわからないこと。わからなくてもいいとこれまで思っていたし、それを見せずにさらっと作って作品を紹介するのが、格好いいことだと思っている節がありました。

 でもどんなノウハウが詰まっているのか、もしかしたら興味を抱く人もいるのかもしれません。

 

ついでにここで1つ明確にしなくてはいけないこと。

ハイブランドは必ずしも丈夫なのか

 私は刺繍においてはそうでないことがほとんどだと思います。

美しいものは繊細である。オートクチュールとはそういうものでもあります。それを少しでも丈夫に見せるために、糸をいちいち変えたり、ほかにも我々にしかわからない細かい裏技を使っているのですけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ご注意】

Immana Parisの作品には水や熱に弱い材料も多数使用しています。そういうものは強く引っ張ればとれてしまいます。

洗濯機にかけて大丈夫!といった謳い文句は一切していません。

帰宅後はブローチを外しましょう(^^;)

(あまりに多いので、数年前から商品カードには”洗濯機にかけないように”と注意書きを加えるようになりました^^;)